映画評「GOEMON」
2009-05-12


午後から労働委員会で2件の事件調査があった。2時半には終了し夜6時半からの異業種交流会まで4時間の空白である。シネマしかない。昨晩、ネットでシネマ情報をチェックし鑑賞可能なタイトルをチョイスした。3時半から6時前まで上映の「GOEMON」をネット予約した。動画予告編の映像の迫力やスピード感にワクワクさせられた。鑑賞者のこの作品レビューでの評価も高かった。
 主役に江口洋介という最も旬の俳優を据えた話題作である。にもかかわらず上映開始後も館内の観客数は驚くほど少なかった。それはそのままこの作品に対する観客たちの痛烈な評価なのだろう。そしてそれは見終えた後の私自身の評価でもある。
 CGを駆使して生み出されたた映像の迫力やスピード感は、結局作りものの域を脱し得ない。やたらと多すぎる戦闘場面はテレビゲームの格闘ゲームにつき合わされている印象が強い。テレビゲームになじめない世代の醒めた視線を感じてしまう。テーマ性がないわけではない。信長、秀吉、家康の天下取りの影で、戦いの犠牲になった民衆の声を代弁するかのように五右衛門の戦いが展開される。そのテーマ性の故に、天下統一直前まで進めた信長と、最終的に天下を鎮めた家康を好意的に扱い、いたずらに天下を弄んだ秀吉が悪役として描かれる。安直で中途半端な歴史解釈にしらけてしまった。
 良くも悪くも今日の日本映画を象徴する作品なのかも知れない。紀里谷和明という40歳の気鋭の監督である。CG技術は日本のお手のものである。テレビゲーム風な仕上がりが日本映画の底の浅さを招いているような気がしてならない。
[映画・観劇評]

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