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一昨日の午後から昨日の１５時過ぎまで民生委員の研修に参加した。会場の神戸ポートピアホテルの広大なホールに３００名ほどのメンバーが顔を揃えた。配られた参加者名簿には神戸市を除く兵庫県の全市町からの参加が記されている。民生委員・児童委員の中堅研修とのことだ。
　開会式のセレモニーの後、基調講演が始まった。駒澤大学准教授の川上冨雄氏による「民生委員・児童委員活動と個人情報の適切な取り扱い」をテーマにプロジェクターによるプレゼンだった。前半は活動を取り巻く環境と今後の在り方が語られた。「日本は２００７年ンに高齢化率21％を超え超高齢社会を迎えた」「日本は平均寿命、高齢者数、高齢化のスピードの三点で世界一の高齢化社会である」「家庭や地域の支え合いが崩壊し無縁・孤立社会化が進展した」「核家族化が更に進んでひとり家族化が始まった」「おひとり様ビジネスが興隆し、配食事業、掃除代行、葬祭業、コンビニなど地縁・血縁で支えていた機能がどんどん商品化されている」「高齢単身者のペットボトルの蓋を開けられないといった困りごとに対応できない社会」「福祉制度の隙間にある深刻な問題の顕在化」等々。あらためて無縁・孤立化社会の実態を教えられ、民生委員が介在が迫られる多くの事例を学んだ。
　後半は「個人情報の適切な取り扱い」をテーマに、今や民生委員活動のネックになりつつある個人情報保護の過剰反応に対する対応について語られた。２００５年の個人情報保護法施行後、住民のプライバシー意識が高まり、民生委員の個別訪問や災害時の要援護者の情報収集に支障をきたす状況が出てきた。こうした過剰反応について政府（消費者庁）は次のような見解を示してその行き過ぎを糺している。「民生委員は特別職の地方公務員として守秘備義務があり、職務遂行に必要な個人情報を本人の同意なしに提供を受けることは可能」「災害時要援護者リストは民生委員等の関係者間で情報共有されることが望ましい」「人の生命、身体または財産の保護に必要な場合などは。本人の同意なしで関係者に情報提供できる」。むしろネックは市町村で制定された条例の厳格な運用にあるとの指摘があった。
　初日の３時過ぎから翌日の３時までの研修は夕食、昼食も含めて事前に事務局で割り振られたグループごとの演習だった。別会場に準備された円卓を７〜８人のグループが囲んだ。私のグループには姫路、明石、西宮、豊岡、宝塚、小野、南あわじ、たつのの各市から参加の男性３名、女性５名のメンバーだった。この長時間のグループ演習の講師は長く全国社会福祉協議会の事務局スタッフとして勤務し定年後独立してコンサルティング活動を続ける泉恵造氏だった。最初に「学ぶ」をテーマに基調講演とも重なる地域の現状が語られた。次に「気づく」をテーマに民生委員活動を実践するうえでの「定例会の在り方」「自分自身の課題の分析」「活動に当たっての気持ちの持ち方や姿勢」などのヒントが提供された。続いて「描く」をテーマにグループごとの演習となった。ある物語の感想を述べ合ったり、全員に配られた断片的な情報をもとに地図を作成し宝の在り処を描いたり、各自が抱える地域の問題点を出し合い共通のテーマを設定しその対応策を模造紙に描く等の演習だった。短期間で否応なく初対面のメンバーどうしが打ち解け、各々の情報や性格が分かりあえる。自然に「情報の共有」や「人との関わり方」が学べるという効果がある。
　一流ホテルを会場とした相応に充実した食事付きの研修会だった。さぞ経費負担も大きかったと思われる。一回限りの受講という制約もあることも頷けた。それでも参加したことによる今後の活動へのモチベーション効果はあったと思う。久々に初心に返って充実した研修を味わった。