藤沢周平著「小説の周辺」(その1:エッセイ集の所感)
2012-11-09


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藤沢周平著作の小説をほとんど読み、再読もほぼ終わってしまった。それでもまだ藤沢作品から離れがたい。そんな想いで書店の書棚の「ふ」のコーナーで視線を移していた。そこで目に留まったのが「小説の周辺」というエッセイ集だった。著者59歳の1986年に単行本として出版されたものだ。
 64のエッセイが三つのパートに分類されて収録されている。それぞれのパートは特に標題はない。収録された内容から第1のパートは、日常生活でのあれこれを綴ったものである。「作家の日常」といたタイトルが浮かんでくる。第2のパートは、ふるさと荘内地方の思い出や帰郷にまつわるもので、「郷愁」といった分野である。最後のパートは、読書、映画、俳句などの評論や自身の作品にまつわるエピソードなどが収録されている。この分野こそが「小説の周辺」なのだろう。
 ここに綴られた「日々の想い」を通して、読者は藤沢作品の背景や意図を受け止め、著者の心情を推測するする愉しみが味わえる。小説でなくエッセイだけに藤沢周平という作家の直截な考えや想いが伝わる。しばしば共感したり、納得したり、触発されたりする文章に出くわす。次回以降で、各パートごとにそうした文章を記しながら所感を綴っておこうと思う。好きな作家のエッセイの琴線にふれた文章について語ることは自分自身を語ることでもある。そんな営みを試してみたいと思った。
[書評]

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