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娘の三泊四日の帰省が終わり、老夫婦だけの生活が戻った。寒さが続く中で、家内と温度についてのチョッとした口論が生じた。
　夫婦で暖房の適正温度の食い違いがある。歳を重ねる毎に亭主の方は寒さが身に沁みるようになった。そこでともすれば高目に設定する。家内は逆に低目の設定を主張する。お風呂の温度も然りである。ともすれば追い炊きスイッチを使いすぎる亭主に文句を云う。
　節電・倹約意識のなせるワザかと思っていたが、それだけではなさそうだ。どうも男女の外気温に対する生理的なセンサー機能の違いではないか。皮下脂肪の違いが暑さ寒さの感受性の違いをもたらしているのではないかと思い至った。
　似たような事例に、洋式トイレの使用方法について男女の認識の違いがある。家の洋式トイレは男女兼用である。男は小用の場合は立ったまま便器に放出する。小便器と違って洋式トイレの射程距離は長い。朝一番に寝ぼけまなこで用をたす場合など的を外す場合もなきにしもあらずである。息子が同居していた頃は犯人の特定は難しかった家内も、今や露骨に亭主に矛先を向けてくる。下手をすればトイレ掃除まで押しつけられかねない。座ったままの小用を余儀なくされている亭主族もいると聞く。そこまで妥協はしたくないという「男の沽券」がもたげてくる。ひたすら便器にすり寄って注意深く用をたす日々が続いている。前立腺肥大症の頻尿傾向がその頻度を倍加させている。
　老後になって男女の生理の違いにあらためて直面した。世間のリタイヤおじさんたちはどのように嫁の非難を凌いでいるのだろうか。気になるところである。