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昨日の朝、娘から小さな桐の箱を見せられた。開けると真っ黒な空豆ほどの塊が真っ白な綿布に乗っかていた。花ちゃんの臍の緒だった。
　病院から我が家に戻ったばかりの花ちゃんがおしめ交換している時に初めてその黒い塊を目にした。お臍のところに黒い塊が乗っかっている様は一瞬ドキリとさせた。母親と胎内で結ばれていた命の架け橋の残滓である。出産の時に臍の緒の一部を残して切り離されることを初めて知った。娘は日々の沐浴の後、その塊の根元回りを丁寧に綿棒でアルコール消毒をしている。その塊は乾燥して日に日に縮んでいく。
　そして二日前の深夜にそれは瘡蓋が取れるようにきれいにはがれていたという。ちょうど出産１０日目に「臍の緒が取れた赤ちゃん」になった。塊のなくなった跡にはきれいなお臍が顔を出した。
　桐の箱は病院で用意されたものだ。その上蓋表面には大きな文字で「絆」と刻まれている。文字通り母から子に授けられた「命の絆」である。同時に桐の箱に入れて大切に保管する習慣は、母と子の永遠に続く「絆」の祈りが込められている。
　「臍の緒が取れた花ちゃん」は、一皮むけた乳児となって私の腕（かいな）でじいちゃんを見詰めている。その瞳が、じいちゃんの花ちゃんに対する絆をいかんなく感じさせてくれる。