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NHK・BSプレミアムのアナザーストーリーズが矢継ぎ早に興味深い番組を提供している。「越境する紅テント〓唐十郎の大冒険〓」の再放送を観た。
60~70年代に日本の演劇界を揺さぶった唐十郎率いる状況劇場がテーマである。劇場に頼らず、神社の境内や河原にテントを張り、全国各地で芝居を上演して回った。観客に日常に突如出現した異空間を提示して見せた。
学生時代に演劇サークルの友人から唐十郎の強烈なインパクトのある芝居は聞かされていたが、アングロ風でどこ猥雑なイメージにはついていけないという印象が強かった。今回のこの番組であらためて唐十郎の目指したものが理解できた気がした。
とりわけ故・中村勘三郎が唐十郎と出会い、その芝居に衝撃を受けたことから「平成中村座」を旗揚げすることになったというくだりは興味深いものだった。勘三郎は「これこそ歌舞伎の原点だ」と受け止めたのだ。今や歌舞伎は伝統芸能として格式と様式美を極めている。それだけに観客との距離は大きい。歌舞伎の原点といわれる出雲の阿国の時代の芝居は、まさしく河原で観客と一体となって演じられていた。勘三郎が「平成中村座」で観客に提示して見せたものはその原点の再現だった。
勘三郎と唐十郎の出会いこそがそれをもたらした。
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