ジェフリー・アーチャ−「ケインとアベル 上・下」
2022-07-04


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ジェフリー・アーチャ−作品の再読2巻目は「ケインとアベル 上・下」だった。ポーランドの片田舎の極貧の家に拾われて育ったアベルと、ボストンの名門ケイン家に誕生し祝福されて育ったウィリアムの出会いと葛藤の物語である。
 前半は二人の生立ちが別々に時空を超えて独自に描かれる。ポーランド移民からのし上がり全米有数のホテル王になったアベルと、名門のエリートとして大銀行の頭取の座を確保したケイン。それは20世紀アメリカの典型的で波瀾に満ちたサクセスストーリーである。
 ケインとアベルのボタンの掛け違いともいうべき不幸な出会いが、物語の縦糸の復讐物語を紡ぎだす。ところが類まれなストーリーテラーである作者の才能はその縦糸に多彩な横糸の物語を配置する。戦争と収容所小説、企業の内幕物語、若い男女のラブストーリー等々。それぞれに良質な完成度をもって展開する。20世紀のアメリカを舞台に生き生きとした時代の息吹を伝える描写が読者を一気に引き込ませる。
 蔵書処分に当たってアーチャーの7作品を残した。2作品の再読を終えて、この作家の作品を処分せずに残した選択にあらためて満足した。
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