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「海の都の物語4」を再読した。この巻は強国・トルコ帝国との息詰まる攻防を描いた「宿敵トルコ」と、イエルサレムの聖地巡礼の紀行記の2部構成である。
1451年、温厚で古武士的な気質のトルコ帝国のスルタン・ムラ―ドが没した。その後の帝位を継いだのは父親とは正反対の性格の19歳のマホメッド二世だった。この若者はあっという間に帝国を掌握し翌年にはコンスタンティノーブルに進攻する。1453年5月、コンスタンティノーブルは53日に及ぶ攻防戦の末に陥落し、ビザンチン帝国は滅亡する。
トルコ帝国によるビザンチン帝国の滅亡で東地中海の勢力図は一変する。コンスタンティノーブルに首都を移したマホメッド二世は強大な軍事力を背景に勢力を西に拡大する。東地中海の覇権を巡るヴェネツィア共和国とトルコ帝国の攻防は、1470年のエーゲ海に浮かぶ島であるヴェネツィア領ネグロポンテの攻防で最大の山場を迎える。7月のトルコ軍の5回目の総攻撃の前に防衛軍は自国の海軍の支援がないままに遂に陥落する。
ネグロポンテ陥落後のヴェネツィア共和国のトルコ帝国に対する硬軟織り交ぜた様々な対応の試みが行われ、1479年にようやくトルコとの講和条約の締結にこぎつける。それはペロポネソス半島の内陸部やアルバニア一帯の拠点の放棄と莫大な賠償金支払いという代償を伴った。
この巻の後半の聖地巡礼の紀行記は、聖地巡礼というヴェネツィアの新興ビジネスともいえる観光事業の性格を映しだした記録である。個人的にも8泊9日のイタリア旅行「ローマ人の物語紀行」をはじめ数多くの旅行記を執筆しHPに投稿した。その意味でもこの聖地巡礼紀行は興味深く読んだ。
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